2009 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおける「失敗国家」化と武装集団化との連動に関する研究
Project/Area Number |
20730119
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山根 達郎 Hiroshima University, 大学院・国際協力研究科, 助教 (90420512)
|
Keywords | アフリカ / 国家の失敗 / 武装集団 / 新しい戦争 / 主権国家 / 平和構築 |
Research Abstract |
平成21年度には前年度までの研究実績を踏まえ、本研究の目的であるアフリカにおる「失敗国家」化と武装集団化との連動についての研究成果報告を積極的におこなった。本件研究代表者は、武装集団の活発化と連動する「国家の失敗」の状況についての理論分析を深めると同時に、本件研究対象としてのリベリアの紛争事例のみならず、アフリカにおけるその他の紛争国やアフガニスタンの事例を並行して取り上げつつ分析の幅を広げる試みもおこなった。本年度の研究は、前年度の研究(先行研究の整理、「国内的アナーキー」や「新しい戦争」などの関連概念の検討、リベリアの事例研究)を踏まえている。とくに理論面では、(1)主権国家体制強化の歴史的プロセスにみる「国家の失敗」論の再考、(2)「新しい戦争」時代の「国家の失敗」と武装集団との関係、の2点について論じた。すなわち本件研究代表者は、第一に、主権国家のガバナンス能力が極めて低い「国家の失敗」の状態について、17世紀以降に成立した主権国家体制の制度化の歴史を紐解くなかで再考する作業をおこなった。このことは、現代武力紛争における「国家の失敗」の特殊性を相対的に浮かび上がらせるとともに、武装集団が関与する「国家の失敗」の原因が長期的な歴史的プロセスおいても観察しうるという学術的意義をも示すことにつながった。そして第二に、本件研究代表者は、Mary Kaldorによって提起された「新しい戦争」論が「国家の失敗」の議論とも連動しうる点について着目し、「新しい戦争」の主要主体としての武装集団の特色について、さまざまな形態の「国家の失敗」を分類化する中で論じた。これにより、国際・地域・国内といった多層的なレベルにまたがる「失敗の国家」化と武装集団化との多様な連動関係を示すという研究上の意義のみならず、その多様な連動関係に対応する平和構築のための研究・実践上の重要性をも示すことにつながった。
|
Research Products
(5 results)