2009 Fiscal Year Annual Research Report
核時代の国際政治とパグウォッシュ会議における日本の科学者の役割
Project/Area Number |
20730121
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Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
黒崎 輝 Nishogakusha University, 国際政治経済学部, 非常勤講師 (00302068)
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Keywords | 国際政治史 |
Research Abstract |
パグウォッシュ会議は、冷戦時代、核戦争の回避や核軍拡競争の抑制に努めたことで知られる科学者国際会議である。その活動には被爆国である日本の科学者も関わっていた。本研究はパグウォッシュ会議とその日本グループの活動を考察対象として、核時代をトランスナショナル・ヒストリーの視点から捉え直すことを目指している。この目的のため、平成21年度は日本および米国で史資料の調査収集を実施した。日本国内では、パグウォッシュ会議に関連した2次資料の調査に加え、京都大学・湯川記念史料室および名古屋大学・坂田記念史料室にて日本グループの中心人物であった湯川秀樹と坂田昌一の個人文書の調査を実施した。坂田文書は日本グループの活動を跡付ける上で非常に有益な資料であった。湯川文書は現在、文書の整理が進行中であり、来年度以降も継続的に調査する予定である。さらに湯川らの下で長年日本グループの活動に参加してきた日本の科学者への聞き取り調査も実施した。米国ではパグウォッシュ会議の活動の実態を一次資料に依拠して解明するため、シカゴ大学の公文書館および米国立公文書館にて関連文書の調査を実施した。パグウォッシュ会議は民間団体であるがゆえに、その活動の実態を明らかにするために必要な史資料には制約があるが、シカゴ大学で調査した科学者の個人文書からは、パグウォッシュ会議の内部文書や、パグウォッシュ会議に関わった科学者と米国政府のつながりを示す機密文書なども見出すことができた。米国立公文書館ではパグウォッシュ会議と政府間外交との関係を実証的に解明する上で有益な史料を調査・収集することができた。帰国後は、収集した各種の史資料に基づき、日本グループの初期の活動の展開をパグウォッシュ会議の活動と関連付けながら考察する作業を行った。この研究成果の一部は論文にまとめ、下記の通り学会誌にて発表することができた。
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