2009 Fiscal Year Annual Research Report
移民ムスリム社会におけるイスラーム政治思想・運動の発展動態をめぐる資料収集
Project/Area Number |
20730123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池内 恵 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40390702)
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Keywords | イスラーム教 / 政治思想 / イスラーム主義 / 政教分離 / 移民政策 |
Research Abstract |
平成21年度は、前年度に引き続き、イスラーム教徒が少数派として存在し、異なる規範・原則が支配的である地域を研究対象に、居住する国の多数派・支配的価値規範との関係において強いられる、イスラーム思想の問い直しと再編成の過程を示す資料の収集と分析を行った。また、これと中東諸国での思想展開との相互の影響関係を調査し、イスラーム政治思想のグローバルな公共圏における発展の動態を観察した。本研究では、イスラーム政治思想史の現代的発展の研究を、いわゆるイスラーム諸国に限定せず、欧米諸国への移民を含めて行い、諸国民国家を横断するイスラーム教徒のグローバルな言説空間における思想発展を調査の対象とした。それによって、第一に、移民社会とホスト社会の間の思想的相互関係を解明し、自由主義・民主主義といった欧米諸国での支配的な価値規範との相互作用を迫られる環境でなされるイスラーム政治思想の変化を特定した。第二に、移民社会に端を発する思想変化が、アラブ諸国や中東地域、そしてイスラーム諸国全体を含むグローバルな言説空間でのイスラーム政治思想の発展に与える影響の解明を進めた。欧州および米国のムスリム移民社会における宗教思想の変動を調査し、資料を収集した。米国ではウッドローウィルソン・センターから招聘を受け、3ヶ月間にわたる滞在調査を行い、ワシントンにおけるムスリム系米国人のロビー団体への聞き取り調査を進めた。エジプトとアラブ首長国連邦を主な調査対象とし、アフラーム政治戦略研究センターの宗教政策研究者への聞き取りや、メディアにおける宗教言説の収集、宗教書の収集を進めた。成果は著書『中東・危機の震源を読む』、論文「政治的イスラームのガバナンス」、論文「オバマ政権初年度の中東政策」(『国際問題』)で発表する共に、ウッドロー・ウィルソン・センターでのコロキアムおよび招待講演(平成21年12月7日)で発表した。また、平成22年度にずれ込んだが、ワシントンのムスリム系アメリカ人の研究者および対ムスリム少数派政策担当者が中心になった学会「イスラーム民主主義研究協会(CSID)」の年次大会(平成22年年4月28日)にて招待講演を行った。
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