2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
花薗 誠 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60362406)
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Keywords | 長期的関係 / 関係的契約 / インセンティブ / 金融契約 |
Research Abstract |
20年度には研究計画にもとづき以下の仮説Aについての研究を開始した。 仮説A)関係的契約の下では、契約事項が(フォーマルな意味での)「契約書」に縛られていないため、不確実な事態・追加的な情報に対して柔軟に対応可能であるが、フォーマルな契約の下では柔軟な対応がより困難になる。すなわち、フォーマルな契約を書くことによるコミットメントの費用が生ずる可能性がある。 上記仮説に関する既存研究・最新動向について調査を行い、おもに論点の整理をおこなった。具体的には、Baker, Gibbons, and Murphy(1994, 2002)で論じられているよりな、エージェントの努力のシグナルが不完全であるケース(subjective performance measure)や、あるいは立証不可能なケースについて、フォーマルな契約を書くこと、また関連する制度的枠組みを整えるによって生ずる問題点をより詳細に検討中である。そこで得られつつある成果としては、フォーマルな契約の執行力を高めるためにモニタリングの精度を高めると、長期的信頼関係に基づいて協力している時の利益だけでなく、協力関係が崩れた際の利得も高まる可能性があるため、協力が維持しにくくなりうるということである。さらなる研究成果を得るため、今後継続して研究を行う。 また、関連研究として、リレーションシップバンキングと企業成長動学について関係的契約に依拠した理論的研究を開始した(東京工業大学の安達貴教助教との共同研究)。一つの論点として、信用の割り当てがどのような要件の下で発生し、企業の成長に影響を与えるのかについて、今後研究を深める予定である。
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