2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
花薗 誠 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (60362406)
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Keywords | 長期的関係 / 関係的契約 / インセンティブ / 交渉 / 情報の集約 |
Research Abstract |
22年度は本研究課題(長期的関係下のインセンティブ契約)に関連する理論的な基礎研究を行った。内容は契約締結時に、適切な契約内容の選択のために必要な情報の集約が行われるかどうかについてである。契約内容の収益性を左右するような情報について、契約の当事者が各々不完全かつ部分的な情報を持っている場合、適切な契約内容の選択や適材適所の達成のためにはそれらの情報を集約することが不可欠である。このような状況下で情報を集約した合意形成が行われるかについて、交渉ゲームを用いて分析を行った。モデル設定として、契約を締結することによって生ずる収益(「パイ」)の大きさが通時的に変化し、当事者がそのパイの大きさについて不完全な個別情報を持つ場合に着目した。 分析の結果、交渉における利益分配の方法の違いが効率的な合意形成に影響を与えることがわかった。利益分配の方法として、たとえば事後的収益の請求権のシェア(%)を決める場合と、事後的収益の請求権を100%一方に与える代わりにその対価として他方が貨幣を受け取る場合を考慮した。具体的には、利益分配を株式で行うのが前者、M&Aのような買収を行うのが後者に対応している。利益分配の方法の違いは個別情報の有効活用の程度を決定する。M&Aのような場合、買収される側は貨幣を受け取ることから、将来のパイの大きさがどのようになるかについての関心が下がり、自らの個別情報を有効に活用しない傾向をもつ。反面、シェアによる利益分配の場合、将来のパイの大きさは自らの利益に直結するため、情報を有効に活用するインセンティブが高まり比較的効率性の高い合意が得られやすい。従って、長期的関係下の契約を締結する場合においても、各々の情報を有効に活用するためには、契約締結時の利益分配の方法を工夫する必要があることが明らかになった。
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