Research Abstract |
何らかのメカニズムを通じて国際公共財を供給する場合,地球温暖化ガス問題のように,不参加によるただ乗りを行う国が出てくる.しかし,すべての国を自発的に参加させるメカニズムが構築できないことは既に判明している.したがって,次善策として,不参加によるただ乗りを最も防止しうるメカニズムを明らかにする必要が出てくる.本年度は,前年度に得た理論分析をさらに進展させ,自発的寄付メカニズムとパレート・メカニズムのそれぞれにおいて,メカニズムへの潜在的な参加国数が増えると,均衡における参加率が下がることを理論的に示した.また,これまで得た理論的な結果は,各国が持ち得る効用関数がコブ=ダグラス型であることを前提としていたが,より一般化できないかを議論した.前年度に得た研究成果も含め,本年度の成果は,西條辰義氏および大和毅彦氏と共に"Why is the voluntary contribution mechanism often used?: Voluntary participation incentives"という題で論文にまとめているところである.また,本年度は,前年度の理論的な成果を実験で検証する予定であったが,理論的な成果に大きな発展が見られたため,基礎研究の整備に注力し,今後行う実験計画を練り直した.一方,同一の社会目標を実現しうる国際公共財供給メカニズム間のパフォーマンスを比較する場合,既存の実験手法を容易に適用できない.そこで本年度は,国際公共財供給への応用も視野に入れ,二本杉剛氏と水上英貴氏と共に,単純な設定の下で実験を実施し,その研究成果の一部を『オペレーションズ・リサーチ』に発表した.また,国際公共財供給メカニズムの性質を調べた研究成果を,Mathematical Social Sciencesに発表した.
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