2009 Fiscal Year Annual Research Report
規模の経済・不完全競争下の国際分業と産業・貿易政策についての理論的研究
Project/Area Number |
20730148
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
須賀 宣仁 Hokkaido University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (70431377)
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Keywords | 国際貿易 / 国際分業 / 産業立地 / 市場統合 / 輸送費 / 独占的競争 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、輸送費の低下にともなう市場統合の進展が国際的な産業立地のパターンと各国の経済厚生に与える効果について分析を行った。本年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.中間財貿易と市場統合の進展に関する前年度の分析に(1)熟練労働特殊的な中間財生産工程、および(2)最終財生産における熟練労働と非熟練労働の完全代替性を導入し、中間財輸送費の低下が国際分業に与える効果について分析を試みた。本分析枠組は垂直分業だけでなく中間財生産における水平分業の可能性、労働力における熟練労働と非熟練労働の区別、生産性の国際的格差をともなうため、今日の先進国-途上国間の貿易パターンとその変化を分析するのに適している。分析の結果、輸送費の低下により垂直分業のみが生じるケースと、中間財生産が先進国から途上国にシフトし、それゆえ、水平分業が生じるケースが示された。後者の場合、熟練労働の実質所得が先進国において低下する可能性があり、所得分配に対する政策的配慮が必要となる。 2.消費財貿易と市場統合の進展に関する前年度の分析に基づいて研究論文"A Chamberlinian Agglomeration Model with Footloose Capital and External Economies of Scale"を作成した。本論文では、消費財輸送費がある一定の水準より低くなると一地域に急激な企業集積が起こること、また、急激かつ一極集中的な企業立地の変化によって産業空洞化が生じる地域では一時的に経済厚生が悪化する可能性があることが示されている。これらの結果は極めて簡潔な枠組のもとで導出されており、本分析の拡張の余地は大きい。貿易障壁が急速に低下しつつある今日において、これらの分析は産業・貿易政策を考える上で重要な判断基準を与えるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)