2010 Fiscal Year Annual Research Report
地域イノベーションシステムにおける大学と公設試からの知識波及の径路とその経済効果
Project/Area Number |
20730162
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
福川 信也 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00433409)
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Keywords | 地域イノベーションシステム / 技術移転 / スピルオーバー / 公設試験研究機関 / 大学 |
Research Abstract |
本研究では、日本企業の特許データ、大学の科研費研究データなどから地域イノベーションパネルを構築し、大学知が産業のイノベーションに与える影響、大学知の波及効果の地理的範囲、大学知が産業に波及する径路について分析を行った。五つの技術分野における推計結果から、以下の点が示された。(1)大学知が産業のイノベーションに与える影響は、技術分野に応じて異なり、医薬や情報通信技術で波及効果が顕著である。(2)医薬では、大学で行われる研究の産業への波及効果は地理的に制約されている。(3)共同研究は大学から産業への知識波及経路として有効でなく、大学知は別の径路で産業の研究開発に影響を与えていると推測される。 本研究では地方自治体が運営する公設試験研究機関による地域中小企業への技術移転活動を以下の方法で定量的に評価した。(1)中小企業の研究開発能力、地域の国立大学における産学連携(共同研究)の活性度に応じて、地域イノベーションシステムの特性を指標化した。(2)因子分析により、公設試験研究機関の多様な技術移転活動を少数の要因に集約化し、各公設試験研究機関の戦略を指標化した。(3)地域イノベーションシステムの特性に応じて、どのような技術移転活動が必要とされるかを理論的に整理した。統計分析の結果から、公設試験研究機関の戦略が地域イノベーションシステムの特性にフィットしていないことが示された。このことから、公設試験研究機関の資源配分が非効率で、地域中小企業が必要とする技術移転活動が十分に提供されない一方、不要な技術サービスが提供されている可能性が示唆された。 これらの実証分析から、大学の研究や公設試験研究機関の技術移転活動を地域のイノベーションに活用するための政策的含意が引き出された。
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