2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730170
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野村 良一 Tokai University, 政治経済学部, 講師 (60465599)
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Keywords | 技術選択 / 輸出補助金 / FTA |
Research Abstract |
本研究の目的は、各国政府の貿易政策が、各国の経済厚生や企業の技術選択にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである。本年度は主として、近年の地域貿易協定の特徴を念頭に、非対称的な国の間での2国間のFTAの形成が世界全体の自由貿易の実現に寄与するのかを検討した。なお、研究発表等を踏まえて、当初の研究計画の1輸入国2輸出国からなる3国モデルではなく、各国が市場および企業を有する3国3市場モデルを用いて分析を行い、以下の主たる結論を得た。企業の技術水準が所与の場合、1.FTA交渉を行う2国間の市場規模が大きく異ならなければ2国間のFTAは形成されるが、overlapping FTAsの形成を通じて世界全体の自由貿易が実現するのは、当初のFTAが市場規模が相対的に大きい国の間で結ばれた場合のみである、2.既存のFTAに域外国を加える形でのFTAの拡大は実現しない。これらの結果は、当初は先進国同士でFTAが形成され、その後、先進国と途上国の間でFTAが結ばれる場合には世界全体の自由貿易が実現することを示唆している。この研究は、2009年10月に東海大学大学院経済学研究科のWorking Paper(No.2009-01)として公開した。また、2010年4月中には査読付きの学術雑誌に投稿予定である。なお、企業間の技術に非対称性を導入することで、企業の技術水準の違いがFTAの形成にどのような影響を及ぼすのかも検討しているが、内生的な技術選択がFTAの形成に与える影響については年度内に十分な成果を得ることができなかったので、今後の研究課題としたい。また上記に加えて、輸出国政府による輸出補助金政策が各国企業の技術選択にどのような影響を与えるのかについても検討した。
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