2009 Fiscal Year Annual Research Report
医療技術への資源配分に対する社会の選好に関する実証分析
Project/Area Number |
20730172
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
後藤 励 Konan University, 経済学部, 准教授 (10411836)
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Keywords | 医療経済学 / 医療技術 / 時間選好 / 危険選好 / コンジョイント分析 / がん検診 |
Research Abstract |
一般の人々が、医療技術に対する資源配分の優先度を決定する際に考慮する因子と、それぞれの因子の間の重要度のウェイトを調査し、そのウェイトにどのような要素が影響を与えるかについて分析を行った。その疾患に自分がいつ・どの程度の確率でかかるかが技術に対する選好を左右することが予測されるため、時間選好と危険選好を量的に分析するための方法の開発を行った。 先行研究では、別々に推定されていた時間・リスク選好パラメータを同時に推定するため、個人レベルの選好多様性が表現できるミックスド・ロジット(Mixed Logit, ML)・モデルを用いて、時間割引率と相対危険回避度を個人ごとに算出した. 一方医療技術の需要を推定するために、前立腺がん検診を例に取り、(1)検診の自己負担額(2)検診方法(個別検診か集団検診か、日時の自由選択の度合いなど)(3)検診の効果に対する国の発表(4)検診でがんを見落としてしまうリスク(偽陰性率)(5)検診でがんでない人を陽性と判定してしまうリスク(偽陽性率)これら5つの要素を基にしたコンジョイント分析を行い、2000名余りの回答者を得た。 分析の結果、リスク回避傾向にある個人は偽陽性や偽陰性のリスクを重視し、近視眼的な時間選好を持つ個人は自己負担額を重視するといった知見をえた。個人個人の時間選好や危険選好の違いが医療技術に対する資源配分の優先度に大きな影響を与えると考えられる。今回はがん検診を例に分析を行ったが、今後は多様な新規的な技術を調査対象にすることが求められる。
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