2008 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアにおける金融制度と経済成長との関連に関する研究
Project/Area Number |
20730174
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 成樹 Hokkaido University, スラブ研究センター, COE共同研究員 (50333589)
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Keywords | 金融制度 / 経済成長 / ロシア / ベクトル自己回帰モデル / ベクトル誤差修正モデル |
Research Abstract |
今年度の研究は、経済体制転換の混乱期を経て世界有数の高成長国となったロシアにおける、金融・成長関係を分析することに充てられた。 分析に際しては、2000年以降の四半期データを用いた。金融部門の発展を示す指標として、貨幣供給量M2の対GDP比、貨幣供給量M2-現金の対GDP比、銀行貸出残高の対GDP比の3種類を利用した。経済成長を表す指標としては実質GDP成長率を用い、さらに設備投資額の対GDP比も変数に加えた。また、ロシア経済の特徴を反映させるため、原油価格を変数に加えた。 ベクトル誤差修正モデルを用いた分析の結果によると、短期的には経済成長から金融部門の発展へのグレンジャー因果性が見られること、長期的には経済成長と金融部門の発展の関係は双方向の傾向があることが明らかになった。また、原油価格は経済成長と有意に正の相関を有することが示された。さらに、インパルス応答分析によると、GDPに対する金融部門発展指標の応答が10期を経ても強い正の影響を有することが明らかになった。分散分解においても、金融部門発展指標の動きに占めるGDPの影響力が強いことが示された。 本研究は、初期条件として資源を豊富に有するロシアにおいて、国際原油価格の高騰が経済成長を促し、短期的には金融部門の発展が経済成長によってもたらされている可能性を示した点で意義深い。また、安定的成長のためには、金融部門の発展により経済成長を達成する道筋を整備する必要があることも明確にされ、示唆に富む研究結果が得られた。
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