2010 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアにおける金融制度と経済成長との関連に関する研究
Project/Area Number |
20730174
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 成樹 旭川大学, 経済学部, 准教授 (50333589)
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Keywords | 金融制度 / 経済成長 / ロシア / ベクトル自己回帰モデル / ベクトル誤差修正モデル / 株式市場 / 原油価格 |
Research Abstract |
今年度の研究は、経済体制転換の混乱期を経て世界有数の高成長国となったロシアにおける金融・成長関係を、さらに掘り下げて分析することに充てられた。ベクトル誤差修正モデルによる分析を行った結果、M2・GDP比から経済成長への因果性が見られる一方、経済成長から貸出・GDP比への因果性が見られることが明らかになった。この一見矛盾する結果は、ロシアの特徴を表している可能性がある。すなわち、原油価格上昇のもとでルーブルが増価する傾向が見られたが、ロシア中央銀行のドル買い介入が、不十分な不胎化のもとで貨幣供給量を増加させた。この結果、株式市場や不動産市場に資金が流入し、資産効果から消費が拡大、最終的に経済成長につながった可能性がある。他方、こうした経済成長のもとで、企業や個人の経済活動が活発化し、銀行が個人や企業向けの貸出を増加させた可能性がある。この成果は、Conference of European Association of Comparative Economic Studies, August 27, 2010, University of Tartuで報告された他、雑誌Europe-Asia Studies (University of Glasgow)からも掲載許可が下りた。 さらに、今年度はBRICsにおける、石油価格の実質株式収益率に対する影響に関する分析も行った。ベクトル自己回帰モデルを利用した分析結果によると、中国、インド、ロシアの実質株式収益率は石油価格に対して正の反応を示したが、ブラジルは有意な反応を示さなかった。またインドの実質株式収益率は、石油価格の上昇局面と下落局面とで非対称的な反応を示した。さらに分散分解を行うことにより、中国およびロシアにおける実質株式収益率の変動のうち石油価格により説明される割合は極めて高いことが明らかになった。この成果は、European Journal of Comparative Economics, Vol.8, No.1(近刊)に掲載される。
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