2010 Fiscal Year Annual Research Report
途上国移民の地域開発と家計の厚生に関する動学的実証分析:メキシコの事例
Project/Area Number |
20730177
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木島 陽子 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 准教授 (70401718)
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Keywords | 経済政策 / 実証分析 / 地域開発 / 貧困削減 / メキシコ / プログラム評価 |
Research Abstract |
この研究の目的は、グローバル化が進む昨今に、途上国における貧困家計が隣国の先進国から受けうる社会経済的な影響を実証分析により検討することにある。具体的には、隣国アメリカ合衆国への国際移民の送金が外貨収入に占める割合が近年急増しているメキシコを例にとりあげる。メキシコはアメリカと地理的に近いのみでなく、NAFTAによる経済的な統合も進みつつあり、ますますアメリカ資本のプレゼンスが高まっている。このような環境下において、移民の送り出し国である途上国における地域開発や貧困削減への効果を検討する。初年度である平成20年度は、アメリカに多くの移民を送り出しているサカテカス州とハリスコ州の240の村で、村レベルのデータを収集した。これは、プログラムが地域開発にどの程度効果があったかを分析するためには、既存データには必要な情報が無かったためである。メキシコの統計地理情報庁(INEGI)が定期的に実施している大規模家計調査のデータEncuesta Nacional de Ingreso-Gasto de los Hogares(ENIGH)のサンプル村から、3x1プログラムがある村と無い村からランダムに村を抽出し、ENIGHデータからは得られない地域開発プログラムに関する詳細な情報と補足的な地域レベルの情報を収集した。21年度はメキシコで収集した地域レベルのデータとConsejo Nacional de Poblacion(CONAPO)のデータやINEGIのセンサスデータを統合させたデータセットを構築し、実証分析を行った。22年度はメキシコの研究者と意見交換をし、分析結果を修正した。プログラムの受益村では、2000年から2005年の間に貧困が減少した。特に、プログラムにより道路、水道、非農業生産性向上プロジェクトに資金を使用した村で貧困削減率が高かった。どのような村がプロジェクトの受益者かに関する分析では、プロジェクトの本来の受益村と考えられるより貧しく移民の多い村がプロジェクトへのアクセスが必ずしも高いわけではないことが明らかになった。論文執筆を終わらせ、学術雑誌Review of Development Economicsに論文を投稿した。
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