2008 Fiscal Year Annual Research Report
観察的学習による社会規範の生成と維持についての国際フィールド実験
Project/Area Number |
20730180
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
佐々木 俊一郎 Nagoya University of Commerce & Business, 経営学部, 専任講師 (50423158)
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Keywords | 観察的学習 / 社会規範 / 実験経済学 / 同調行動 / 利他的行動 / 国際比較 |
Research Abstract |
本年度は、日本居住者約1000名を対象としてインターネット実験を実施した。実験では、最後通牒ゲーム(自分に与えられた初期賦存額を他の被験者と配分するゲーム)と同種の「配分ゲーム」の状況をウェブサイト上に再現し、被験者は他人の行動が観察できる状況とそれができない状況の2つの異なる状況下で「配分ゲーム」をプレーした。本年度は、被験者のプレーのデータを精査することによって、彼らの行動が他人の社会規範意識に影響を受けるか、受けるとしたらそれはどのように特徴づけられるかについて中心的に分析を行った。実験結果によると、被験者の社会規範意識は、他人の行動の観察的学習に有意に影響を受けていることが明らかになった。具体的には、他人の行動の観察的学習は、被験者の同調行動および非同調行動双方を促進させる傾向があるものの、非同調行動よりも同調行動を、利己的行動よりも利他的行動を促進させる傾向が強いことが明らかになった。また、年齢・性別等被験者の個人属性によって、他人の行動の観察的学習の影響力が異なる働きをすることも確認された。こうした結果は、他人の行動の観察的学習は、人間の社会規範意識に多面的な影響を与えることを示唆しており、行動経済学・実験経済学における社会的選好の文脈においても、新規性のある発見と言える。また、上記の研究成果は、本研究課題における一連のフィールド実験におけるベースラインと位置づけられ、来年度以降は日本以外の数カ国で同種の実験を実施してデータを分析することによって、他人の行動の観察的学習が社会規範の生成と維持にどのように影響を与えるかについて、国際比較に焦点を当てながら分析を進める予定である。
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