2009 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少社会における政策効果-子育て世代の家計行動とその多様性に焦点を当てて-
Project/Area Number |
20730182
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
持田 めぐみ Kagawa University, 経済学部, 准教授 (60432770)
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Keywords | 経済政策 |
Research Abstract |
本研究では、少子高齢化社会における政府の政策効果について分析を行っている。本年度の公表論文では、少子化対策としての児童手当政策が、家計の出生率を上昇させうるかどうかについて理論モデルを構築し、検証を行った。この研究の特徴は、子育て世代の経済的格差を労働生産性の違いとしてモデルに組み込むことで労働の異質性を考慮している点である。さらに、現在の未婚率の高まりに見られるように一生涯に子供を産んで育てるかどうかについても労働期の家計行動の異質性を考慮した。本研究のように子育て世代の様々な経済行動の背景にある同一世代内の経済条件・行動、嗜好、生活形態等の多様性を理論モデル化し、政策効果を検証することは現実経済への該当性の点からも極めて重要な視点であると考えられる。児童手当政策の効果を検証した先行研究の多くは、実社会で行なわれているような子供の数に応じて児童手当(子ども手当て)を給付する政策は、子育て世代に養育する子供を増やすインセンティブを与え、出生率上昇に寄与する結果となっている。これに対して本研究で得られた結果は、子育て中のパートタイム家計がフルタイム労働と遜色ない賃金率で働ける場合には、政府の政策介入や児童手当(子ども手当て)政策の規模拡大によって、政策意図とは逆に却って出生数を押し下げうる可能性を指摘している。これは、現在の日本で見られる女性労働のM字カーブや非正規労働者の増加など、児童手当政策の効果が単に金額の問題ではなく、出生数決定を行う労働者世代の雇用、及び働き方の問題にも大きくかかわることを示したものである。
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