2011 Fiscal Year Annual Research Report
量と質のリスクを考慮した水供給の制度設計に関する研究
Project/Area Number |
20730188
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
朝日 ちさと 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (90457812)
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Keywords | 水道供給 / リスク / 不確実性下の便益評価 / 脆弱性 / 厚生測度 |
Research Abstract |
国際的に水供給の民営化の大きな流れが続いている。日本の水道事業においても、人口減少及び財政難を背景とした構造改革の一環である地方公営企業の経営改革の観点から、第三者への業務委託の制度化、公の施設の指定管理者制度の創設、地方独立行政法人法の施行等によって可能となった多様な供給制度の導入に関する検討が進んでいる。しかし一方、公益事業の市場化については、供給制度の変化が安定供給を損なう事態をもたらした経緯がある。水の供給においても、国際的には市場化によって水質の悪化や料金の高騰が生じて社会問題化した事例が報告されている。公益の観点から安定的な供給が要請される水資源を、市場メカニズムの活用によって配分する制度を構築するためには、水という財の特性が配分の効率性にもたらす影響を検討することが必要とされている。本研究は以上の問題意識のもと,水道による水供給の信頼性が確保される制度設計を検討するために,水道システムにおける量と質のリスク及びリスク対策の制度と評価について、経済学的観点による整理を行なったものである。 本年度においては、4)「4.水市場モデルによる供給制度選択の実証分析」を実施し、5)「5.量と質のリスクを考慮した水供給の制度設計の提案」として報告をまとめた。前者の実証分析については、平成23年度に実施したランキング型コンジョイント法による分析を踏まえ、量的および質的リスクに関するアンケート調査を行い、消費者の水道インフラリスクに対する選好の構造を明らかにした。さらに、供給者側の施設リスクに関するデータ(PIデータ)の分析を踏まえ、これらと消費者のリスク意識との乖離を検証した。これらの分析結果をもとに、リスクを含む消費者の水需要関数を多項ロジットモデルによって推定し、家計による水道の施設事故リスク対策は事前のリスク認識によって選択されている可能性が高いことを示した。
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