2010 Fiscal Year Annual Research Report
フィールド実験によるマイクロクレジットプログラムの考察:返済期限とグループ貸付
Project/Area Number |
20730198
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Research Institution | 日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
Principal Investigator |
高野 久紀 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 在ケンブリッジ海外派遣員, 研究員 (40450548)
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Keywords | マイクロクレジット / 返済期限 / グループ貸付 / マイクロ保険 / 家計内意思決定 / 現在志向バイアス |
Research Abstract |
理論論文執筆、これまで実施したベトナムでの複数の調査データを用いた計量経済分析を行った。理論分析からは、返済期限の設定が借り手の借入れポートフォリオ(マイクロクレジットと金貸しの組み合わせ)、投資選択に影響を与えることが明らかになるとともに、既存の社会関係資本を利用したグループ貸付では、所得の不確実性がある場合には、小さい確率で発生する負のショックが既存の社会関係資本を破壊しうる可能性があること、「社会関係資本を利用したグループ貸付」と「グループ貸付による社会関係資本強化」は同時に達成することが困難なことが明らかになった。計量分析からは、個人貸付に比べグループ貸付の方が返済率が低くなること、期待投資収益は同じでも収益の確率的な分布が返済率に影響を与えることが明らかになった。また、マイクロ保険については、保険を一つだけ提示されるよりも複数提示された方が保険購買率が高まること、前期に保険を買っていなかったが負のショックをうけた場合には今期の保険購買率が高まること、所得に関するフレーミングは保険購買率に影響を与えないこと、などが明らかになった。また、近年の研究では、貯蓄やマイクロクレジットの参加に現在志向バイアスが重要な影響を与えていることが明らかになってきたが、マイクロファイナンスが家計に与える影響を検討するために、現在志向バイアスと夫婦間意思決定の問題を分析した。その結果、現在志向バイアスを持つ個人は、そのようなバイアスを持たない配偶者に所得移転をし、金銭管理をゆだねることで家計として現在志向バイアスの問題に対処できる可能性があるものの、実際には現在志向バイアスを持つ個人ほど配偶者に所得移転せず、金銭管理を自分で行っていることが明らかになった。また、そのような現在志向バイアスを持つ夫をもつ妻は、家計資金を夫から守るために積極的にROSCAに参加していることも明らかになった。
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