2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 真 Hokkaido University, 大学院・公共政策学連携研究部, 特任助教 (50419959)
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Keywords | 財政学 / 年金 / 税制改革 / 基礎年金消費税方式 |
Research Abstract |
近年、わが国では高齢化の進展とともに国民負担における社会保険料負担のウェイトが高まっており、税制改革の議論において税と社会保障の一体的な制度設計が課題となっている。わが国の税と社会保険料は、所得課税において社会保険料控除が認められているだけでなく、課税ベースを共有しているなど互いに密接に関係している。本研究では、こうした税制と社会保障負担のあり方に関する議論に資するべく、消費税の年金目的税化など現在議論となっている課題について、税と社会保険料を合わせた負担への影響を二年間で分析することを目的としている。 研究初年度にあたる平成20年度は、当初の計画通り、基礎年金の消費税方式化が税・社会保険料の負担に対して与える影響を分析した。基礎年金の消費税方式化は、平成20年1月に政府内に設置された社会保障国民会議において具体的にその影響が検討され、5月に試算結果とバックデータが公開された。しかし、本研究が課題とする消費税方式移行時に生じる社会保険料控除の減少とそれに伴う所得課税の負担増については分析されていない。 そこで平成20年度の研究では、各種統計からこの二次的に生じる負担増の規模を算出し、その規模が小さくないことを明らかにした。同時に、社会保障国民会議のバックデータを用いて収入階級別、世帯類型別の影響を分析し、国民会議の試算と異なる影響が生じることを明らかにした。その際、負担増の発生を消費税の増税幅を抑えることで中立化した場合の影響についても分析した。分析結果は学会にて報告を行った。基礎年金の消費税方式化が社会的に注目された時期に、同じテーマに関する研究成果を発表できた意義は非常に大きい。特に社会保障国民会議で示されていなかった影響を明らかにしたことは、基礎年金の消費税方式を具体的に検討する際の基礎的研究として貢献できるものと考える。
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