2009 Fiscal Year Annual Research Report
連続時間契約理論アプローチに基づく信用リスクにおける伝染効果の理論・数値分析
Project/Area Number |
20730204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 恒 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 講師 (80418649)
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Keywords | 信用リスク / 企業再構成 / インパルス制御 / 伝染効果 / 連続時間 |
Research Abstract |
本研究は、連続時間契約理論アプローチを使って信用リスク分析を行い、金融市場における内生的な伝染効果の動向を理論・数値的に検証することである。平成21年度の計画は、前年度に構築した理論モデルを改善しながら数値分析を進めることであった. 実際、平成21年12月~平成22年1月には米国金融危機の現地調査のため米国連邦準備理事会(現在オバマ政権の下で米国の金融システムの監督機関)に研究滞在・発表を行い、国際学会等で研究発表し、さらに1月後半には韓国Ajou大学からの招待を受けることによって、論文「A Continuous-Time Analysis of Optimal Contracts with Restructuring in an Environment with Costly Information Disclosure : Theory and Applications」の改善を進めた. 具体的な内容は、まず、平成18-19年度科学研究費用補助・若手研究(B)「連続時間契約モデルを用いた信用リスクにおける流動性プレミアムの分析」(研究課題番号18730209)において作成した情報非対称性の下での連続時間理論モデルを応用し、均衡資産価格評価モデルを構築した.とくに企業再構成(私的整理、会社更生など)の期待破産リスク評価への影響を分析する理論的枠組みをつくった.たとえば米国等では企業再構成は私的整理を含めると企業債務不履行の8割を占めることからもわかるように、企業再構成の資産価格への影響について均衡資産価格評価モデルを構築し伝染効果への含意を導くフレームワークをつくった成果は小さくはないと思われる.連続時間の確率解析のインパルス制御という手法を用いモデルを解析的に解くことに成功し、連続時間の数値解析の手法を用いて具体的な数値分析を成功させたのが本稿の貢献である.企業のレバレッジ比率は、企業再構成が可能であると期待されるとき、高くなることが示される.さらに、企業解散が突然起こるような状況を想定すると、短期の破産確率は上昇し、同時に企業再構成の確率は低下することが示される.これらの結果は、信用スプレッドの過少評価という過去の実証文献の未解決の問題にひとつの解決の道を示した.
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Research Products
(4 results)