2008 Fiscal Year Annual Research Report
外国為替レート変動における不完全情報と学習効果の役割
Project/Area Number |
20730205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加納 隆 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 寄附講座教員 (90456179)
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Keywords | 為替レート / 国際マクロ経済モデル / 動学的一般均衡モデル / 不完全情報 / 学習効果 / ベイズ統計 / 周波数解析 |
Research Abstract |
今年度の当初の研究計画の目標は、「新しい開放マクロ経済学」(New Open Economy Macroeconomics : NOEM)として知られる動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルを、Gourinchas and Tornell(2004)の部分均衡モデルで考察された金融政策ショックに関する不完全情報と学習効果によって理論的に拡張することにあった。実際、今年度のかなり早い時点で、Gourinchas and Tornellの部分均衡モデルで考察されたような、各国の金融政策ショックの持続性に関し情報の不完全性が存在し市場が誤った信念を形成しているという状況を2国モデルに導入し、金融政策ショックの為替レートに関する一般均衡的効果を理論的に観察することができた。このとき過去の実証研究で示されているNOEMのパズルの一つである「金融政策ショックに対する為替のdelayed overshooting puzzle」を、モデルのパラメータの設定によっては理論的に導出できることを示した。しかしながら、もう一つのNOEMのパズルである「為替レートのdisconnect puzzle」をモデルから生成することができないことが明らかになった。それゆえ為替トレーダーとその他の経済主体間に金融政策ショックの構造に関する信念の異質性を認めたうえで動学的一般均衡モデルの解を導出することに着手した。2008年5月に共同研究者であるHafedh Bouakez准教授(HEC Montreal, Quebec, Canada)を客員研究員として招聘しこの方法を模索し始めたが、現在まで適切で妥当な解の導出に残念ながら至っていない。 一方今年度の研究計画の一部である、ベイズ統計量と周波数解析を用いた動学的一般均衡分析の実証的評価方法の開発と応用は一定の成果をあげることができた。とりわけNOEMの一部である小国開放経済のDSGEモデルのベイズ推定の研究は、国際経済学におけるtop jounalであるJournal of International Economicsに採択され現在掲載予定である(下記研究発表の欄参照のこと)。またJames Nason博士(アトランタ連邦準備銀行)との共同研究である周波数解析を用いたDSGEモデルの実証的評価の研究は多くの各国中央銀行およびその研究会で報告されるに至り(下記学会発表の欄参照のこと在学術雑誌に投稿するための校正を重ねている。
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