2010 Fiscal Year Annual Research Report
マスメディア報道が株式市場に及ぼす影響に関する実証研究
Project/Area Number |
20730213
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
阿萬 弘行 甲南大学, 経済学部, 准教授 (70346906)
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Keywords | 金融論 / 株式市場 |
Research Abstract |
今年度、企業情報が株価形成に及ぼす効果に関して、マスメディア報道のあり方に焦点を当てた実証研究を進めた。これまで改訂を進めてきた論文が、最終的にJapan and the World Economyにおいて,「Firm-specific volatility of stock returns, the credibility of management forecasts, and media coverage : Evidence from Japanese firms」として出版された。この中では企業固有情報に起因する株式リターンの変動が、新聞報道量増加に伴って、上昇すること、および記事内内容によって影響を受けることを示している。また、株価の急激な下落(Crash)に対して、マスメディア報道の量、分布が及ぼす効果を分析した論文「An Empirical Analysis of the Effect of Media Coverage on Stock Price Crashes : Evidence from Japan」を国内セミナー(関西大学)および経営財務研究学会部会・海外学会(Asian Finance Association 2011)において報告した。具体的には、情報の逐次的な反映のもとでは株価はスムーズに変動し、反対に、急激な情報反映のケースでは株価はクラッシュするという想定で、新聞記事報道の頻度と標準偏差で計測した集中度からの影響を見た。クラッシュのスケールは二つの方法で計測した。第一に、正規分布の仮定の下での年間クラッシュ頻度、第二に、下位パーセンタイルのクラッシュリターンが全体のネガティブリターンに占める相対的シェアである。現時点での実証結果では、報道頻度と標準偏差ともに、株価クラッシュを増幅させる効果があることを示している。これらの結果は、企業情報の伝播プロセスにおいて、マスメディアによる報道形態(平均的な報道量およびその時期的集中度)が、短期間での急激な情報反映を促進することを示している。社会的な情報媒体として認知されているマスメディアが、株式市場で果たす役割を学術的観点から解明することに寄与するものである。
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