2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本型証券取引システムに関するマーケット・マイクロストラクチャー研究
Project/Area Number |
20730221
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
井坂 直人 上智大学, 国際教養学部, 准教授 (00434192)
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Keywords | 金融 / 経済統計学 / ファイナンス / マーケット・マイクロストラクチャー / 実証ファイナンス / イベント・スタディー |
Research Abstract |
本年度は、以下の3つの研究に従事してきた。第一に、昨年度の研究を発展させて、業績予想の下方修正発表前の注文フローの動向に関する実証分析をおこなった。その結果、(1)ネガティブ情報の発表前には最良売り気配数量が増加し最良買い気配数量が減少していること、(2)情報公開までの期間が長いと指値注文が入る確率が高まるのに対し、情報公開直前には大口成行注文が入る確率が高まること、(3)情報公開日が近づくと始値に含まれる情報量が増加し、指値注文と成行注文の両方がよりインフォーマティブになることが確認された。これらの結果は、情報トレーダーが成行注文だけでなく指値注文を積極的に用いていることを示している。この研究成果は英文論文にまとめた上で複数の国際学会(査読付き)で報告した。 第二に、今年度購入した株式データセットを用いて、売買単位引き下げや株式分割を契機とした流動性トレーダーの増加が株式資本コストに及ぼす影響を実証的に分析した。その結果、新興市場に上場している認知度が低い銘柄に関して、個人投資家を主とした流動性トレーダーの増加によって株式資本コストが大幅に低下し、資本コストの低下が個人株主増加に起因した固有リスク分散効果と相関を持つことが明らかとなった。一方、東証上場企業などの認知度が高い銘柄では固有リスク分散効果の影響は限定的であった。この研究成果は英文論文にまとめて英文学術誌に投稿中である。 第三に、売買単位引き下げが長期的な株式リターンと株価の情報効率性に及ぼす影響を分析した。その結果、売買単位引き下げ後には長期にわたって流動性トレーダーが増加し、長期株式リターンを上昇させる効果を持つことが明らかとなった。一方、個人株主を主とした流動性トレーダーの増加は、ポジティブ情報に対する株価の情報効率性を高める一方、ネガティブ情報に対する情報効率性を低下させるという結果も得られている。この研究成果は邦文論文にまとめている。
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Research Products
(7 results)