2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730223
|
Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
澤田 充 Nihon University, 経済学部, 准教授 (10410672)
|
Keywords | 銀行 / ポートフォリオ / 金融危機 / キャピタルクランチ / 流動性 |
Research Abstract |
本研究は、預金保険制度が存在しなかった戦前日本の銀行産業のデータを用いて、金融危機下における銀行のポートフォリオ選択について考察を行うものである。特に、資本殿損に陥った銀行が資産ポートフォリオ選択において貸出債権などの危険資産から安全資産へシフトさせるキャピタルクランチの検証と預金取り付けなどの預金ショックに伴う、流動性マネージメントに焦点を当て分析を行った。 まず、流動性マネージメントの分析については、銀行のポートフォリオとして、保有有価証券、貸出の3つの資産の構成に焦点を当て、前者2つを流動的な資産、後者を非流動的な資産と考え、負の預金ショックが銀行の手元資金比率や有価証券比率に与えた影響について統計的に検証を行った。実証分析の結果、預金ショックの変数は有価証券比率には正、手元資金比率には負の影響を与えていることが確認され、負の預金ショックに直面した銀行は、保有有価証券を市場で売却して手元資金を確保した可能性を示す強い結果を得た。さらに、広義のポートフォリオの流動性(手元資金+保有有価証券)比率については、預金ショックの変数が強い効果を持たなかったことから、負の預金ショックに対して、広義のポートフォリオの流動性は大きく減少することがなかったことが明らかになった。さらに、伝染効果の影響や日本銀行の最後の貸し手機能(Lender of last resort)の影響について分析を行った。実証分析の結果、伝染効果などによる一時的な預金ショックに対して、銀行は保有有価証券を機動的に売買することでポートフォリオの流動性を調整していた可能性について、強い確証を得たのに対し、日本銀行の最後の貸し手機能が、民間銀行の流動性の調整を緩和する効果については検出されなかった。 資本ショックの影響については、銀行資本を正しく計測するために1920年から1936年の『株式年鑑』(野村商店調査部・大阪屋商店調査部)を用いて、財務諸表に関するデータベースを完成させ、現在分析を行っている。
|