2011 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権下における政府間協調の形成と維持に関する研究
Project/Area Number |
20730226
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
山口 力 広島修道大学, 経済科学部, 教授 (60435047)
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Keywords | 租税競争 / 租税協調 / 繰返しゲーム / 非対称国 |
Research Abstract |
平成23年度は本研究計画の最終年であり、予定した年次計画に従い、研究論文の発表および改訂作業に専念した。 本研究の目的は、地方政府間の政策協調がどのように形成・維持されるのか、無限繰返しゲームを用いて分析することであり、同質な多数の地方政府間における部分的な資本課税協調について、『Partial tax coordination in a repeated game setting』では、全地域数の協調グループに占める地域数の割合が増加するに従って協調を維持するのが困難となる結果を導出し、改訂版では、安定均衡の概念を導入することで部分協調の形成がどのようになされるかについても分析を行った(現在、専門学術雑誌に投稿中)。 また、非同質な3国における資本課税協調について、『On the sustainability of partial tax harmonization among asymlnetric countries』では、3国全てが協調する全体協調、2国が協調し、1国が非協調となる3通りの部分協調について分析を行い、資本の異なる3国のうち中規模の資本賦存量となる国の大規模国および小規模国の資本賦存量に対する相対的資本量が全ての協調持続性に関して決定的な要因となることを示し、京都産業大学、関西公共経済学研究会共催の「公的部門の限界責任」(6月11目~12日、於京都キャンパスプラザ)および「近経研究会」(9月8日、於 横浜国立大学)で発表した(現在、専門学術雑誌に投稿中)。 政府間の政策協調を繰返しゲームで扱っている研究はそれほど多くはないが、資本課税政策や環境対策など、政府間における利害対立の例は少なくない。持続的な政府間の政策協調に関する本研究結果は、資本課税競争や環境制度設計といった経済理論への貢献だけではなく、現実に国家間の利害対立に直面している欧州連合のような連邦体系や国際的な地球温暖化に関わる枠組み、およびわが国の道州制議論にも有益な指針となるであろう。
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