2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期・戦時期日本における企業合併・買収の歴史研究
Project/Area Number |
20730232
|
Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
加藤 健太 Takasaki City University of Economics, 経済学部, 講師 (20401200)
|
Keywords | 三菱商事 / 大正製糖 / 買収 / 社債 / 企業合併 / 報償契約 / 名古屋電灯 / 地方自治体 |
Research Abstract |
本年度は、2つの事例を取り上げて一次史料を用いた研究を進めた。(1) 三菱商事による大正製糖(の工場)の買収計画とその失敗要因、社債権者の選択とその動機などを検証した。三菱商事は、大正製糖との製品一手販売・原料一手買付、信用供与を通じた取引関係とそれらに関わる債権に基づいて、自らの手で工場を買収し経営するプランを主張した。しかし、同社の取締役会で複数の役員から、買収価格などに関する疑問が出されたため、当初の買収価格を下回る金額でしか入札できず、工場の落札は叶わなかった。他方、社債権者は、担保権の実行と工場の競売という手段を選択するとともに、帝国製糖の参加を取り付けて受け皿(中央製糖)を創設し、社債をその株式に振り替えることで「償還」への道を切り開いた。この事実は、社債権者が、精糖工場の運営に関してより豊富な経営資源を有するパートナーを選んだと解釈できる。 (2) 名古屋市を対象にして、名古屋電灯の合併行動に対する地方自治体と議会の関与の実態を検討した。名古屋市は、名古屋電灯との報償契約の締結により、合併に関する許認可権を手に入れ、同杜の合併行動に強い利害を有するようになった。名古屋市会は、関西水力電気との合併について活発な議論を展開し、名古屋電灯が解散会社となること、合併比率、合併後の収益性の悪化などの諸点に疑義を挟んだ。その結果、この合併は、市が同社を買収する際に、合併に伴う株式の増加に伴って買収価額が上昇した部分を控除することといった内容の附帯条件を課した上で、漸く承認された。以上の事実は、認可主体である地方自治体・議会の関与が、合併条件の著しい不公正によって合併後の収益性が悪化するという問題を緩和した可能性を示唆する。 この他、新潟県立文書館や国立公文書館、三菱史料館、東京大学経済学部図書館等で資料調査を行った。22年度はこれらの資料を用いて研究を進める予定である。
|