2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期・戦時期日本における企業合併・買収の歴史研究
Project/Area Number |
20730232
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
加藤 健太 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (20401200)
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Keywords | 利害関係者 / 企業合併 / 企業買収 / 株主総会 / 株主 / 大日本紡績 / 新潟電気 / 山陽パルプ工業 |
Research Abstract |
2010年度は、M&Aの動機と効果、M&Aをめぐる利害関係者の主張と行動に関するケーススタディを実施した。 第1に、大日本紡績を取り上げて、戦時期の綿糸紡績企業の重化学工業分野を中心とする株式所有の実態を、株主の反応に光を当てながら検討した。その結果、(1)東洋紡績や鐘淵紡績と比較した場合、大日本紡績は1930年代まで株式所有に積極的でなかったが、1940年代に入ると、資本参加や現物出資などを通じて重化学工業部門の企業の株式保有を活発に進めたこと、(2)こうした戦時経済(国策遂行)への適応行動に対して、同社の株主は明確な賛意を示していたことを明らかにした。 第2に、新潟電気を素材にして、株主利害を視野に収めつつ、戦間期の電力業の企業合併を成長と統制という2つの視角から検討した。その結果、(1)新潟電気が、主に供給能力の強化を目的にして合併戦略を展開したこと、(2)同社は、経営資源(モノ)の即時調達という視点から見て、発電所の新設に比べた場合の合併の有利性を強く認識していたこと、(3)株主が、合併条件という目の前の直接的な利害ではなく、合併の意義、追加的投資の影響や他の選択肢といった企業の経営行動に関わる部分にも関心を払っていたことなどを明らかにした。 第3に、山陽パルプ工業を対象に、株主総会で交わされた株主と経営者(議長)の質疑応答の検証を通じて、太平洋戦争期における株主の影響力のあり方を検討した。その結果、株主が、山陽パルプ工業の存続に直結したミヨシ化学興業に対する岩国工場の譲渡とその後の経営方針をめぐって、自らの利害を積極的に主張し、それが実際の意思決定にインパクトを与えたことを明らかにした。なお、この研究は、『年報日本現代史』第16号(2011年5月刊行予定)に掲載されることが決定している。
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