2011 Fiscal Year Annual Research Report
輸出品検査と同業者組織の比較経済史 近代東アジアの「公」と「私」を中心に
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20730233
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
四方田 雅史 静岡文化芸術大学, 文化政策学部・文化政策学科, 講師 (60453974)
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Keywords | 中小企業 / 産地 / 輸出品検査 / 工業組合 / 取引所 / 社会関係資本 / コモンズ / 評判・声価 |
Research Abstract |
まず、日本・中国の検査所や同業者組織、それと密接に関連していると考えられる取引所を対象にしつつ、中国・日本にある公文書館や図書館(档案館、国史館など)に赴き史料を引き続き収集し、その分析を行った。日本では産地の「声価」という観点から、産地を単位として企業を束ねる中間組織が見られたが、上海では産地の「声価」という観念は脆弱であり、むしろ企業の商標(評判)の集合体として産地の評判が考えられていたという特質があるとの仮説がある程度立証された。この点について、工業組合や同業公会の記事や史料が日中両国で比較的残っていたゴム製品製造業を一例として、企業間協力の比較分析を行った一論文を上梓することができた。 次に、特に研究計画にあった台湾について、中国的制度の上に日本的制度が接ぎ木された事例として、検査所・同業者組織・取引所の史料を蒐集・分析し、日本・中国の制度を相対化しうることを見出した。日本で産地の「声価」を基にした中間組織・企業間協力による秩序化が、台湾総督府の施策にも反映されたが、台湾独自の社会制度から影響を受けて日本と異なる状況が見られたことが言えると考えている。 このような分析を通じ、近代の日本と中国において産地を秩序化するあり方の違いが、近代化の差異や、現代の日中両国にみられる経済・文化摩擦を理解するための一助になる重要性がある。上記の分析を通じ、「私」的領域に属する企業が、産地共通の「公」的課題をいかに認識させたかに衍衛させ、「私」のなかから「公」的解決策が模索されていく過程を解明してきた。そして、社会関係資本(Social Capital)、コモンズ、個人間・企業間の協力に関する先行研究を渉猟しながら、上記の研究成果を日本・アジア経済史全体の枠組みに位置付けられるよう努めた。
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Research Products
(1 results)