2009 Fiscal Year Annual Research Report
企業の成長と工業都市の衰退―19世紀後半南ウェールズ製鉄業の企業間関係―
Project/Area Number |
20730235
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
菅 一城 Doshisha University, 経済学部, 准教授 (70276400)
|
Keywords | 1870代 / グラモーガン州 / ダウライス製鉄会社 / 鉄鋼商 / 取引仲介 / 技術革新 / 産業集積 / 鋼鉄 |
Research Abstract |
(研究内容)平成21年度は、グラモーガン公文書館所蔵のダウライス製鉄会社受領書間綴りのうち、ウェールズの西部港湾都市スウォンズィーに拠点をおく鉄鋼商フォレスター商会が1870年代に発信した書簡、ウェールズと首都ロンドンを結ぶ幹線鉄道会社グレート・ウェスタン鉄道会社が1880年代発信した書簡を重点的に分析した。以下は論文にまとめた前者について記し、後者については平成22年度中に論文として発表する。 (研究成果の意義)フォレスター商会の書簡から、1) ダウライス製鉄会社の鉄鉱石と木炭の購入、そして鉄の販売、とくにグラモーガン州西部の板金工業への鉄供給の仲介にフォレスター商会が従事し、製鉄会社の生産量の少なからぬ割合を扱ったこと、2) 鉄販売の受発注から納品・清算に至るまで一貫してフォレスター商会が仲介し、顧客の多様な需要と製鉄会社の供給能力の調整を担当したこと、3) 鋼鉄生産の実用化・商業化の時期に、フォレスター商会が鋼鉄の販路の開拓に努め、また顧客からのフィードバックを収集して鋼鉄の品質改善に寄与したこと、を示した。 (研究成果の重要性)1870年代あるいは南ウェールズに限らず、これまでの英国史において鉄鋼商は等閑視され、鋼鉄の登場についても技術革新・伝播にのみ関心が集中し、あたかも優れた製品の供給が自動的に需要を生み出すかのような印象を与えていた。この研究は、鉄鋼商の活動の一端を明らかにするとともに、鋼鉄生産の実用化・商業化という技術革新においで鉄鋼商が果たした役割を描きだした。また、20世紀に管理能力の欠如・硬直が指摘される英国製造業が19世紀に誇った「柔軟性」についても熟練職人生産だけでなく、鉄鋼商など流通業者の柔軟な対応を考えることができる。
|
Research Products
(1 results)