2008 Fiscal Year Annual Research Report
機能性化学産業における製品開発・企業戦略と競争優位
Project/Area Number |
20730240
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑嶋 健一 University of Tsukuba, 大学院・ビジネス科学研究科, 准教授 (50313086)
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Keywords | 機能性化学 / 製品開発 / 企業戦略 / 競争優位 |
Research Abstract |
本研究の目的は日本が国際競争力を持つ「機能性化学品」の領域に焦点をあて、日本企業が国際競争力をもつに至った歴史的経緯や競争優位の源泉について、企業戦略、製品開発マネジメントの視点から明らかにすることにある。その際、近年、経営学の分野で発展してきた「アーキテクチャ」の分析枠組みを用いて産業間(製品群間)比較の視点から考察することが本研究の特徴のひとつである。 本年度は、機能性化学品の典型例である液晶材料における成功事例として、新日本石油の「日石LCフィルム」の事例分析を行った(本研究の詳細については桑嶋・島田(2008)を参照)。事例分析では、新日本石油が石油化学ビジネスから機能性化学事業を創出し、同ビジネスで成功するに至った歴史を詳細に分析することで、同社の「組織能力構築プロセス」を明らかにした。「日石LCフィルム」は、同時期に開発が行われた富士フイルムの「WVフィルム」と直接の競合関係にあり、しかも、富士フイルムと比較してフィルム生産に関わるコア能力が脆弱であったために、多大な努力を強いられ、紆余曲折の結果、携帯電話用液晶フィルムの市場で世界トップ・シェアを取るに至った。その成功のポイントのひとつは、「アーキテクチャのポジショニング戦略」によって明確に説明できる、すなわち、新日石は、先行する富士フイルム「WVフィルム」が"単一商品戦略"を基礎とした「I-M(中インテグラル・外モジュラー)戦略」を採用したのに対して、自社の技術特性を生かす"カスタマイズ"を基礎として「I-I(中インテグラル・外インテグラル)戦略」を採用することで、差別化に成功したのである。 本研究で試みているように、日本の機能性化学企業が、いかにして今日の競争優位につながる組織能力を構築したのかを探った研究蓄積はまだ少ない。今後、さらに事例分析を行うとともに、事例横断的な分析も必要である。
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Research Products
(4 results)