2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730249
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
三好 祐輔 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (80372598)
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Keywords | 経営学 |
Research Abstract |
企業組織内における不祥事決定問題と、貸金市場との相互の連関を明らかにすることが本研究の目的である。最終年度である今年度は前年度の実績報告と、今年度の交付申請書の研究実施計画に基づき、貸金市場の実態ならびに不祥事発生の構造自体を定量的に探る研究を行った。特に、株主が経営者をどのように規律しているか、経営者に提示する将来の企業収益に連動する役員報酬体系と経営者による不法行為への誘引のトレード・オフ問題を回避できているかモデル分析を行った。 まず、不祥事決定問題に関する研究の結論としては次のようなものが得られた。第一に、企業が不祥事を起こすかどうかは、経営者の役員賞与比率や役員持株比率に求めることができる。第二に過去に不祥事をした企業は、不祥事を起こしやすいという認識を持たれ、経営者の役員賞与が相対的に少なく、経営者に株式所有を持たせなくなる傾向にある。そのため、たとえ法律による取締りを強化して摘発しても、現状では経営者が不法行為をとることを減らすことを難しくしている。特に実証研究の成果は、日本金融学会で報告され、そこで得られた議論、さらに一年目、二年目の成果に基づき、研究全体がまとめられた。従来の先行研究で扱ってきたエージェンシー問題とは別の角度から、こうした現象を実証研究だけでなく、理論モデルを構築できたことは意義があったと考えられる。 さらに、貸金市場においては、上限金利規制の水準で貸出しが行われ、供給曲線が右下がりで、かつ超過需要が発生している。また、金利規制の引き下げに対する他の消費者金融業者の追随率は低く、規制の対象でないカード会社などは必ずしも貸出金利を引き下げていない。2000年6.月に施行された上限金利規制の水準の引き下げにより、社会的余剰が増加することを理論モデルから説明することができた。なおこの研究成果の論文は、査読付き学術雑誌「法と経済学研究」に受理され、掲載予定となっている。
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Research Products
(2 results)