2008 Fiscal Year Annual Research Report
繊維産業における企業間分業を通じた生産技術の蓄積・発展に関する実証研究
Project/Area Number |
20730251
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
木野 龍太郎 Fukui Prefectural University, 経済学部, 准教授 (40405072)
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Keywords | 繊維産業 / 技術蓄積・発展 / 企業間分業 / 生産システム |
Research Abstract |
本研究は、日本のモノづくりの競争力について、企業間分業を通じた生産技術(製品技術・製造技術)の蓄積・発展との関連から検証・考察を行ってきた。具体的には、繊維産業を対象として合繊長繊維織物の産地である福井に焦点をあて、聞き取り調査を中心に調査を行った。繊維産業は工程ごとに別々の企業となっているため、本年度については、製織工程、その準備段階の糸加工、および、原糸メーカー、織機メーカーへの調査を行った。そこで明らかになったことは、かつて絹織物を行っていた福井産地では、人造絹糸を経て合成繊維織物の製造を行うようになった。その過程において、従来の素材とは性質が大きくことなることから、織布企業は原糸メーカー、織機メーカーなどと共同で製織技術を確立してきた。そのことが逆に、産地にある製織技術が外部に流出することとなり、円高の進展と相まって、海外での織物生産の拡大につながる結果となったと考えられる。一方、当初は主に原糸メーカーが製品開発を行い、産地に技術指導を行ってきたが、現在では織布企業が製品開発し逆に提案していく形となってきている。このようにして、産地に生産技術が蓄積することで、新たな競争力を獲得することにつながってきたことが明らかになった。現在、これらの内容を補完すべく、アンケート調査の準備を行っている。 従来の研究においては、産業そのものの競争力や技術を検討することはなされていたが、それらの技術がどのように組み合わされて技術が蓄積・発展してきたのか、それぞれの企業はどのような技術を保有しどのような役割を担ってきたのかについては、あまり明らかにされてこなかったが、本研究ではその点を明らかにしたことに意義があると言える。また、繊維産業は歴史が長く多くの事柄を経験しているため、他業種が今後どのように発展していくのかを考える際に、非常に参考となる業種であるといえる。
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