2008 Fiscal Year Annual Research Report
昭和・平成期における南部杜氏の育成方法と就職斡旋方法についての研究
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20730256
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Research Institution | Fuji University |
Principal Investigator |
堀 圭介 Fuji University, 経済学部, 講師 (80438514)
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Keywords | 技能形成 / 人的資源管理 |
Research Abstract |
(1)昭和期における蔵元への杜氏斡旋の主体としては, 杜氏をさらに束ねる存在としての「大杜氏」が挙げられる. 本研究ではまず, 大杜氏からの就職斡旋がどのような形でなされていたのかという点について, 現役杜氏および引退した杜氏への聞き取り調査を実施し, さらにそれを裏付ける支部会計簿等の資料を収集することに努めた. 昭和期における大杜氏による就職斡旋は, 協会からのそれとともに一つの有力な斡旋方法であったということが明確にされた. (2)杜氏をはじめとする蔵人の持つ熟練技能の一般的特徴を解明するために, 今年度は複数の杜氏への聞き取り調査を実施した. 各杜氏のこれまでのキャリアについて聞き取りを行うとともに, 特に熟練が必要とされる浸漬(限定吸水)および製麹工程において, どのような点に特に留意しながら各種操作を実行しているのか, 各操作の際の判断基準等についての聞き取りを行った. 杜氏によっては判断基準等について明確な言葉として述べることが難しいとする者も少なくないが, 各種操作に際しては考慮に入れるべき要素が複数存在し, かつこれらが環境によって変化しやすいということが明らかになった. (3)関西の大手酒造メーカー複数社を比較対象として, 機械化の進展に伴って必要とされる技能・熟練, 分業のあり方は中小の酒造メーカーとどのように異なっているか, またどのような方法で人材育成に取り組んでいるか, という点についてフィールド調査および聞き取り調査を実施した. ここでは相対的に監視業務の要素が強くなっている場合があるものの, 複数のメーカーにおいては機械化の進展した工場で働く従業員を, あえて定期的に手造りの要素が残存する工場へ配置換えする等の方法によって酒造りに関するノウハウを現場に蓄積させようと試みていることが明らかになった.
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