2009 Fiscal Year Annual Research Report
昭和・平成期における南部杜氏の育成方法と就職斡旋方法についての研究
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20730256
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Research Institution | Fuji University |
Principal Investigator |
堀 圭介 Fuji University, 経済学部, 講師 (80438514)
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Keywords | 熟練技能 / 人材育成 / 酒造業 / 協業 |
Research Abstract |
成果としては大きく以下の3点にまとめられる. 第一に,酒蔵での参与観察および蔵人への聞き取り調査に基づき,酒造労働の具体的内容および必要とされる熟練の一般的特徴を明らかにしたことである.清酒製造における熟練ないし技能が一種の暗黙知に相当するものであるということは先行研究においても指摘されているが,本研究ではさらに議論を進めてなぜそれらが暗黙的なままに留まっていることがしばしばありうるのか,という点について複数の杜氏への聞き取りに基づき考察した.これに加え,これまでの酒造労働における研究では触れられることのなかったタイプの熟練としての「協業のための熟練」(蔵の中にある各種の情報から各工程の進捗状況を把握し清酒製造という工程全体の流れに自分を当て嵌めこむことができるようになること)を見出した.第二に,聞き取り調査に基づいて前述の「協業のための熟練」概念をより精緻に考察したことである.この協業のための熟練を獲得する過程とは,工程の流れやリズムに自分の作業を同期化させることができるようになる過程であるとともに,自己の置かれている物理的・社会的位置を理解してゆく過程でもある.さらに,協業のための熟練を獲得するためには,蔵内の各種の情報を利用したり作業のペースを理解したりすること以上に,酒蔵における労働のあり方を規定する中心的存在である杜氏と感性を共有し『阿吽の呼吸』をもって作業に従事する必要があるということを参与観察と複数の蔵人・杜氏への聞き取りに基づき明らかにした.第三に,昭和24年から現在までの南部杜氏協会北上支部歴代会員全員の就職状況と勤務地に関するデータを『南部杜氏協会北上支部八十八年史』における資料部分および座談会部分としてまとめた. 以上3点が本研究を通して得られた主な研究成果である.
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