2010 Fiscal Year Annual Research Report
革新を導くプロデューサーシップに関する研究-コンテンツ製作と製品開発を対象に
Project/Area Number |
20730261
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山下 勝 青山学院大学, 経営学部, 准教授 (80348458)
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Keywords | 経営学 |
Research Abstract |
最終年度となる本年度は、前半に一般企業におけるプロデューサーシップのありかたを、主に早期離職者と継続就業者を取り巻く環境の違いに目を向け調査分析を行った。後半はふたたびコンテンツ製作の現場に目を移し、優秀なプロデューサーを育成する企業の管理についての調査分析を行った。 これまでの研究からもわかっているように、継続就業者は早期離職者に比べて、職場の人間関係への適応がスムーズであった。これは単に本人の資質によるものだけではなく、その周囲にプロデューサーシップをもったメンターがいたことが、すべての就業者ではないものの、確認することができた。しかしながら、これらの関係は非常に属人的であり、そのメンターが企業から離れると、同時に本人も企業を離れてしまう危険がある。こういったプロデューサーシップをもったメンターのリテンションが企業にとっても大きな課題となる。 コンテンツ開発の現場で行われた調査は、某アニメーション制作会社の現役プロデューサー18名と、事業部長、全社内取締役に対して行われた。本格的な分析は次年度以降となるが、簡易的な分析の結果、優れたプロデューサーだけが行っていたのが他職務への侵犯だということがわかった。この調査対象企業では、近年、新規作品の業績が落ちており、プロデューサーの能力不足が指摘されていたが、その多くは自職務を忠実に守り、けっして他職務を犯そうとしない紳士的な仕事姿勢がそれを阻害していたようである。その背景には、安定的な成長のなかで、企業制度も発展し、分業体制の明確化が行われてきたことによるものであった。 以上より、プロデューサーシップの本質的な部分は、既存の分業プロトコルを破った他職務侵犯と、それを可能にする濃密な人間関係にあると、大まかに定義することが可能である。これについては、次の研究課題へと引き継ぎ、さらに深めていきたい。
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