2008 Fiscal Year Annual Research Report
派遣労働者等の非正規労働者のキャリアと人的資源管理
Project/Area Number |
20730266
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
島貫 智行 Yamanashi Gakuin University, 現代ビジネス学部, 講師 (40454251)
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Keywords | 経営学 / 人的資源管理 / 非正規雇用 |
Research Abstract |
本年度は、派遣労働者の視点から、派遣という働き方の特徴を明らかにするために、登録型派遣労働者に対する聞き取り調査をもとに探索的な検討を行なった。調査の結果、以下の発見事実を得た。第一に、派遣労働者は短期的には派遣元企業を通じて容易に就業機会を得ているが、長期的に派遣就労を続ける上では、(1)賃金の上昇、(2)スキルの開発、(3)組織への適応(所属意識)を実現する難しさを経験している。この背景には、派遣元企業に雇用されながら派遣先企業に就労するという派遣労働の雇用形態上の特徴があり、派遣労働者が雇用関係のない派遣先企業からは正規労働者のように長期的な支援を受けられず、一方で派遣元企業と雇用関係があるためにフリーランスのように労働市場で自由に仕事を探すことも制限された状況に置かれていることが推察される。 第二に、これらの困難に直面した派遣労働者は、ただ困難を受け入れるだけでなく自ら困難を克服しようとする。だが、派遣労働者が正規労働者やフリーランスとなることは極めて難しい。その結果、多くの派遣労働者は、一つの方略として特定の派遣元企業の仕事を長期的に引き受けることにより派遣元企業から提供される機会を利用してスキルの開発と賃金の上昇を図るとともに、またもう一つの方略として他の派遣労働者との人的ネットワークである「派遣仲間」に加わることにより、良い派遣元企業を探索する上での情報を獲得し、派遣仲間に所属意識を持つようになる。 上記の発見事実を受けて、派遣労働者が困難を克服しにくい構造やメカニズムを検討するために、派遣先企業や派遣元企業の社員に対する聞き取り調査を実施している。また、発見事実を説明する上の理論的枠組みの検討も進めている。
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