2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730300
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
諸藤 裕美 立教大学, 経済学部, 教授 (20335574)
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Keywords | 原価企画 / 自律的組織 / トヨタ |
Research Abstract |
総合的利益管理活動としての原価企画を行うに際しては、各組織構成員が自らの環境の変化に敏感に適応すべく自発的に行動し、必要に応じて他の組織単位の組織構成員と情報共有や協力をしあう自律的行動が必要であるということ、また、そのような自律的行動を支えるために原価企画システムが備えておくべき要件が幾つか存在することについて、既存研究をサーベイし明らかにした。そして、原価企画の生みの親であるトヨタにおける原価企画が総合的利益管理活動へと進化する過程において、上記自律的行動のための要件がどのように満たされていったかについて、創業時から原価企画が総合的利益管理活動として行われるようになる1960年代末までの時代について歴史的に明らかにした(学会報告)。トヨタの原価企画の歴史について扱った研究はこれまでにもあったが、自律的行動のための要件をどのように満たしていったかという視点で進化の過程を跡付けた点が本報告の特徴である。また、社内報『トヨタマネジメント』(現在トヨタテクノミュージアム産業技術記念館等でも複写・館外貸出不可)を丹念に調べ、原価企画が利益管理活動へと発展した経緯など既存研究で示されてこなかった事実を明らかにした点も貢献の一つと考えられる。 また、原価企画に携わる組織構成員にとって、市場からの情報の取り込み、他部門やサプライヤーとの情報共有を積極的に行うラグビー型製品開発は、以前の欧米で行われていたリレー方式に比べ、情報処理負荷が高いと考えられる。また、コスト競争の激化に伴い複数目標の同時達成がより困難になったこと、トヨタにおける原価企画対象費目の拡大など、情報処理負荷をさらに深めると思われる動きが近年自動車産業において生じている。このような情報処理負荷に対してどのように原価企画システムを構築しているかについて、既存研究の議論を踏まえ、トヨタの事例を用いて明らかにした(公表論文)。
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