2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730305
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
石川 博行 大阪市立大学, 大学院・経営学研究科, 教授 (60326246)
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Keywords | 配当政策 / コラボレーション効果 / コロボレーション効果 / シグナリング仮説 / 経営者の配当予想 / 首尾一貫したメッセージ / 下方硬直的な配当政策 / 配当のライフサイクル仮説 |
Research Abstract |
平成22年度は、日本企業の配当政策が株式市場に与える影響について、「コロボレーション効果(コラボレーション効果)(corroboration effect)」の観点から実証分析した成果を研究書として刊行した(2010年9月)。ここでコロボレーション効果とは、利益変化と配当変化のアナウンスメントが相互に関連付けて評価されることをいう。日本市場を分析対象としてコロボレーション効果を分析した先行研究は存在しない。そこで、同書の第1部では、日本市場を対象として、このコロボレーション効果に関する様々な証拠を蓄積した。具体的には、経営者予想の修正の公表(第2章、第3章)や利益と配当の時系列(第4章)に対して、コロボレーション効果の存在と持続性を裏付ける証拠を得た。第2部では、配当のライフサイクル仮説が日本企業の経営者や市場に受け入れられているかどうかを実証的に考察した。分析の結果、増配を選択しているのは成熟企業よりもむしろ成長企業である(第6章、第7章)、成熟企業よりも成長企業の増配の方がプラス・アルファの評価を受けている(第8章)という、ライフサイクル仮説と逆の証拠を得た。同書では、これらの証拠をコロボレーション効果の概念を用いて統一的に解釈した。 第1の意義は、配当のライフサイクル仮説について、米国とは異なる日本独自の証拠を発見し、かつその証拠がコロボレーション効果の観点から解釈可能であることを示した点である。第2に、コロボレーション効果の観点から、配当政策を議論する際に参照可能な科学的証拠を提供している点である。具体的には、首尾一貫したメッセージ(増益局面)と下方硬直的な配当政策(減益局面)の重要性を指摘した。最後に、コロボレーション効果を包括的に分析した世界で初めての研究書であることを指摘しておきたい。
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