Research Abstract |
本研究の目的は, 買収防衛策の導入という企業の姿勢に対して, 株主がどのような反応をするか, そして企業価値そのものがどのように変化するかを明らかにすることである. 買収防衛策の導入は,経営者を短期的な買収の脅威から解放し, 中長期的視点に立った経営戦略(短期的には利益を下げるような研究開発投資や設備投資など)の構築を可能にする, その一方, 株主による規律付けの効果を減退させてしまうことも事実である. 先行研究では, 一般論として, 資本市場が買収防衛策導入を規律付けの減退を招く要因と考え, 買収防衛策導入時に負の反応をすることが明らかになっている. しかし, 前者の効果を狙って買収防衛策を導入する経営者もいるはずであり, そのような経営者にとっては, どのようにして買収防衛策導入の意図を株主に理解させるか, という問題に取り組む必要がある, そこで, 本研究では, まず, 日ごろの株主重視の姿勢と, 株主への真摯な情報公開を行うことが, 買収防衛策導入時に株主の理解を得るための必要条件であることを確認する. 研究初年度である平成20年度は, 経営者の株主重視の姿勢の代理変数として, 株主総会の活性化に着目し, 株主総会の活性化が観察された企業において, (1)経営者予想利益の精度が高いこと, (2)その精度の高さが会計発生項目(accruals)の利用に因るものではないこと, そして(3)経営者予想利益の株価関連性が高いこと, を確認した.
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