2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730317
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 Hannan University, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
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Keywords | 株式所有構造 / 持ち合い / 企業価値 / 情報開示 |
Research Abstract |
本年度の研究では、企業価値を構成する諸要因が企業行動にいかなる影響をおよぼすかについて、理論的背景を整理するとともに、持ち合いに代表される株式所有構造が企業価値および情報開示のあり方にどれだけ関わるかを検討した。まず、従来は合理的な投資家を前提にして理論を構築してきたが、今回はノイズトレーダーと呼ばれる非合理な投資家が市場に参加すると仮定した場合に、企業の行動がどう変わるかを予備的に考察した。結果として、ノイズトレーダーの存在は、利益操作をはじめ企業による情報開示に一定のバイアスを生じさせることが判明した。同じことは、企業が所有構造を内生的に選択するケースにもあてはまると考えられ、今後の分析に有益な方向性を示すことができたと考えられる。非合理な投資家の割合が、株式の持ち合いを助長するか否かについては、実証研究の対象として興味深い視点を与えている。 つぎに, 所有構造と企業間での事業の補完性・代替性との関係について、ファイナンスおよび会計の理論を概観した。事業に補完性が認められるなら、株式を相互に所有することにメリットが存在し、代替的な事業に従事する企業間では逆に空売りが促進される。日本において近年復活しつつある株式の持ち合いは、鉄鋼業をはじめむしろ共通する事業領域を形成する企業間で顕著であり、こうした直観的な帰結にある意味反している。このような視点にもとづき、企業と潜在的な買収者との間でゲームを設定し、最低な持ち合いが企業間で成立するための必要十分条件について考察した。事業の補完性・代替性を追加的な変数として加えた場合に、かかる均衡がどう変化するかについては、次年度以降の課題としたい。
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