2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730317
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
中條 良美 Hannan University, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
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Keywords | 株式所有構造 / 持ち合い / 企業価値 / 情報開示 |
Research Abstract |
本年度の研究では、企業のファンダメンタルを構成する諸要素が、企業価値にどのようなかたちで写像されるかを検証するために、ボラティリティ・テストとよばれる手法の展開を試みた。Shiller testとも呼称されるこの手法は、企業価値を定式化する理論モデルが、現実の株価を説明するうえでどれだけ有効な機能を果たしているかを、分散の大きさを比較することによって検証する。理論モデルをもとに算出した企業価値の分散は、現実の株価のばらつきのあるべき範囲を画するから、株価データから導かれた分散がこれを上回る場合、株価の形成過程に当該理論モテルの説明力を逸脱する要素が混入している可能性が高い。ここでは、残余利益モデルを取り上げ、会計情報の流列によって事後的に確認される理論値の分散が、現実の株価の分散をどれほどカバーしているかを調査し、結果としてバブル経済(平成バブルとITバブル)の時期に残余利益モデルをもちいても、株価を説明する効力が著しく希薄化してしまうことが実証された。 問題なのは、ファンダメンタルの構成要素を何に求めるかである。本研究で重要な位置を占める株式所有構造によって投資者のファンダメンタルに対する期待が変わるなら、企業価値を算出するモデルは一律に決まらないはずである。たとえば、金融機関の持分ないし融資が大きい企業に対する市場のフォーカスは、ボトムライン項目よりも経常利益などに合わせられるかもしれない。この点については、以前の研究ですれに実証している。したがって、所有構造に応じて理論モデルのインプットを変化させ、それぞれのアウトプットに対して上記の手法を適用した場合にいかなる結果が導かれるかが、今後の課題として提示される。
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