2008 Fiscal Year Annual Research Report
政府・宗教組織・コミュニティの「協働」に基づく社会関係資本の貧困救済効果
Project/Area Number |
20730323
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 晋作 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 専門研究員 (60374873)
|
Keywords | 社会関係資本 / コラボレーション / ネットワーク / 宗教社会学 / 貧困 / ダニエル・ベル / P・L・バーガー |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ合衆国のブッシュ政権の「信仰に基づくイニシアティヴ」政策の正当性と効果とを検証した。それは、政府・宗教組織・コミュニティの「協働」がいかになされ、そこで醸成される社会関係資本がもたらす貧困救済効果を測定するがためのものである。ブッシュ政権の最終年において、この政策の展開過程を実証的に考察した。 研究の内容として、まずはこの政策の予算額、予算の配分先の宗教組織の種別を調査し、その配分の偏りや公正さについて検討した。次にアメリカ合衆国に行き、社会サービスを積極的におこなっている宗教組織に具体的活動内容・活動人数等をヒアリングした。ニューヨーク市内にある大規模な教会を中心に調査対象とした。 こうした実証的な研究と同時に、「信仰に基づくイニシアティヴ」政策をめぐる論争をも考察した。新保守主義者とみなされているダニエル・ベル、ピーター・バーガーの二人の社会学者によるこの政策への立場を明らかにし、その根拠にある社会観・福祉観にまで踏み込んで解析した。その結果、この政策を支持・批判する仕方に様々な論拠や背景があり、市民社会・福祉国家・宗教組織へのマクロな認識が、この政策への評価に反映されることを明らかにした。 「信仰に基づくイニシアティヴ」政策をめぐる議論は、これまでの社会保障政策と異なって、「保守」対「リベラル」という単純な二項対立では捉えきれない様相を呈しており、コミュニティ内の宗教組織の役割、そして宗教組織とコミュニティとの「協働」への期待が、この政策への積極的評価を生み出している。
|