2010 Fiscal Year Annual Research Report
政府・宗教組織・コミュニティの「協働」に基づく社会関係資本の貧困救済効果
Project/Area Number |
20730323
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 晋作 盛岡大学, 文学部, 准教授 (60374873)
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Keywords | 社会関係資本 / 貧困 / コラボレーション / ネットワーク / ダニエル・ベル / ピーター・L・バーガー / 宗教社会学 |
Research Abstract |
本研究は、ブッシュ政権によって実行された「信仰に基づくイニシアティワ、およびコミュニティ・イニシアティヴFaith-Based and Community Initiatives」政策を考察することを通じて、政府・宗教組織・コミュニティの「協働」によってもたらされる貧困救済の効果を検討した。第一に実証的に政策の課題を考察した。FBCI政策は、オバマ政権によって、Faith-Based and Neighborhood Partnershipsとして引き継がれた。ネオコン政権からの転換を期待されて登場したオバマ政権がこの政策を引き継いだのは、この政策が単に保守的政策にとどまらずに、アメリカ福祉国家の再編過程において、市民社会を活性化させる可能性を引き出すと考えられていたからである。 第二にパットナムが展開した社会関係資本論とFBCI政策との関係を考察した。パットナムの社会関係資本論の実践的課題の一つは、このFBCI政策であった。宗教組織における社会関係資本のあり方として、信仰者同士の「結束型bond」社会関係資本を、非信仰者をも含むコミュニティの連帯にいかに導くかということを課題としていた。それゆえこの課題のために、多元的宗教の可能性を理論的に考察し、市民社会における多元的宗教の役割を検討した。 第三に新保守主義者によって支持される傾向があるFBCI政策の別様の可能性を検討するために、新保守主義者とみなされているダニエル・ベルの「資本主義の文化的矛盾」論を考察した。ベルは、単に新保守主義者の立場からFBCI政策を積極的に評価していたわけではなく、福祉国家の再編過程において、市民社会とよりリベラルな宗教組織の社会活動とを活性化させる方途の一つとして、FBCI政策のなかに可能性を見いだしていた。 本研究の考察を通じて、アメリカ福祉国家の再編過程のなかで、政府、宗教組織、コミュニティそれぞれによる「協働」が社会関係資本を強化し、それが貧困救済に効果をおよぼすことを明らかにした。
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