2009 Fiscal Year Annual Research Report
メディア・リテラシーと社会階層に関する計量社会学的研究
Project/Area Number |
20730327
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
橋本 摂子 Tokyo Institute of Technology, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (70323813)
|
Keywords | 社会階層 / メディア・リテラシー / 公共圏 |
Research Abstract |
21年度は、マクロデータを用いた実証研究と並行し、メディア・リテラシーと社会階層の関連を考える背景として、公共圏と政治とのかかわりについて理論的考察を深めた。特に、言論によって構成される公共圏が言説を通じてどのように生成されるのかを、政治思想家ハンナ・アーレントのテクストを手がかりに公/私区分の生成と維持という視点から社会学的な検討をおこなった。その成果は論文としてまとめられ、学会誌に投稿、掲載されている。また、昨年度の分析作業により明らかになった日本国内におけるメディア・リテラシーの階層間格差の実態を踏まえ、世代間継承の分析作業を進めたが、親-子のメディア・リテラシーに関する(学歴以外の)指標を備えたマクロデータが得られなかったため、世代内格差の実態調査を深化させる方向に転じ、米国との比較研究の準備を進めた。具体的には、カリフォルニア大学バークレー校に滞在し、先行研究と資料の収集、研究者との意見交換をおこなった。主にインターネット・アクセスと社会階層の視点から、米国におけるデジタル・ディバイドの推移と現状について調査した結果、日本同様、米国においてもインターネットの爆発的普及から未だ日が浅く、世代間でのリテラシー継承の実態については検証がなされていないことが判明した。また、米国においてもインターネット・アクセスと社会階層の関連は強く、社会移動に関して不利な層ほどアクセスの機会が低い。コンピューター保持、インターネット・アクセス等のデジタル・ディバイドがもつ階層固定化、あるいは機会是正効果の実態について、注意深く検討する必要があることを明らかになった。
|