2010 Fiscal Year Annual Research Report
メディア・リテラシーと社会階層に関する計量社会学的研究
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20730327
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
橋本 摂子 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (70323813)
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Keywords | 社会階層 / メディア・リテラシー / 公共圏 |
Research Abstract |
22年度は、21年度におこなった政治と公共圏の理論的検討の成果を踏まえ、公共的正義を支える条件としての公共性と言論空間との相補的関係について理論的検討を発展させた。さらに、21年度におこなった米国におけるデジタル・ディバイドの推移と現状についての調査結果をもとに、主としてマクロデータを用いたメディアリテラシーと社会階層の国際比較研究について理解を深めた。特に、インターネットを中心とするメディア接触頻度、ネットからの取得情報の種類、およびコンピュータ・リテラシーと社会階層とのかかわりを中心に、日本とアメリカの比較検討をおこなった。具体的には、昨年度に引き続き、カリフォルニア大学バークレー校に滞在し、先行研究と資料の収集、研究者との意見交換をおこなった。さらに2004年-2006年のアメリカ版General Social Survey(GSS)を用いて、インターネット利用とコンピュータ・リテラシーから派生するデジタル・ディバイドが年齢・人種・性別および学歴・職業階層とどのように関連しているのかを集中的に分析し、2008年の日本版GSS(JGSS)データとの比較をおこなった。米国においてもコンピュータを通じたインターネット利用と社会階層との関連は強いが、日本と異なり人種や居住地域の影響も強く残ることが明らかになった。また、米国の公立図書館において一般開放されたコンピュータのネット利用形態を一定期間参与観察した結果、12歳以下の子どもについて、娯楽コンテンツ受信型のインターネット利用が広く普及している一方で、階層的差異は検索エンジン等を用いた能動的な情報取得にあらわれることが明らかになった。今後日本において文化資本としてのデジタル・ディバイドを考えるにあたっては、情報の選別能力に踏み込んだ視点が求められると予想される。
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