2010 Fiscal Year Annual Research Report
減災に資する「共同性」の構築に向けて:課題解決を目指す社会学的研究の試み
Project/Area Number |
20730335
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅 磨志保 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (60360848)
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Keywords | 市民活動 / 減災 / 共同性 / 受援力 / 回復力 / 市民事業(コミュニティビジネス) / 相互性の論理 |
Research Abstract |
助成最終年度となる本年度は、研究課題に関する現段階の総括となる総説論文を幾つかまとめた(→雑誌論文)。また昨年度に引き続き、活動実践者(災害NPO等)・実務家(ジャーナリスト等)との対話の場にも積極的に参加し、この場で扱った問題解決志向の活動実践にも取組んだ。当初の計画は、ほぼ遂行できたと考えているが、フィールドワークの過程で発見した事象・課題にも取組んだことで、想定していなかった成果も得られた。本研究の柱となる2つの課題の実績概要を以下に記す。 (1)新たな解釈枠組みの構築:「共同性」概念による「共助」概念の再検討 年度初めに(1)地域の共同性から公共性を紡いでいく可能性(田中2010)、(2)受援者との関係性に焦点を当てた支援活動(原田2010)に関する理論的な研究成果が出されたので、成果のまとめに際しこれらを参照することができた。また実践者・実務家との意見交換の場(今年度は巨大災害に向けた防災訓練企画会議)に参加し、具体的な活動現場をイメージしながら「受援力」「回復力」の概念を検討し、訓練後の活動評価の場で設定したコンセプト(概念)が、訓練の実践で具体的に議論されたことで問題の見落としを減らしたり、配慮すべき問題の発見につながっていたことを確認できた。 (2)将来の課題解決に資する手法の提案:市民事業の分析を通じて 災害復興期の市民事業に関する需要サイドの活動実績データの分析から、中軸となる事業コンセプトを見出すことはできたが、元々この事業は供給側の理由で始められるケースが多く、事業の成功の鍵となるのは供給側の条件整備であることが分かった。また、活動実績データの分析手法をまとめると、(1)災害社会学の時間軸と社会的単位の枠組の設定、(2)個人のレベルと事業のレベルに分けて活動実績を整理、(3)それぞれのアウトプットと相互の関係性の分析するという流れで整理できる。
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