2010 Fiscal Year Annual Research Report
観光と政治――戦前期における中国人の「満洲」ツーリズム
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20730348
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
高 媛 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 講師 (20453566)
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Keywords | 満洲 / 観光 / 空間認識 / 帝国 / 植民地 / モダニティ / 戦争 / メディア |
Research Abstract |
本研究は戦前期「満洲」において行われた中国人の観光について、歴史社会学的観点から分析しようとするものである。観光を近代的娯楽であると同時に、国民国家の空間認識を形成させるための装置として両義的に捉える。観光が持つ両義性への着目は、観光を行った中国人の日常生活を浮き彫りにするだけでなく、そこに埋め込まれていた政治性を明らかにすることになる。こうした政治性の解明は、満洲で作動していた権力の実態を浮き彫りにし、満洲社会の新たな側面を提示することになる。 今年度は、満鉄をはじめとする在満観光機関主催の中国人向けの観光イベントを中心に考察してきた。そして、当時発行されていた中国語メディアの記事と関連の文書資料と突き合わせながら、中国人観光に関する満鉄・満蒙文化協会側の具体的な取り組みと、満洲社会に与えた影響について分析してきた。なお、本研究と相補的関係にある「日本人の満洲観光」については、「満洲観光元年」にあたる1906年夏に実施された大規模な修学旅行の経緯を明らかにした。その成果は論文「戦争が生み出した観光-日露戦争翌年における満洲修学旅行」としてまとめ、『Journal of Global Media Studies』(紀要第7号)に発表した。 今後、これまでの調査の蓄積を生かして、戦前における中国人の「満洲」観光の全容を解明し、論文としてまとめる予定である。
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