Research Abstract |
今年度は本助成の最終年度にあたる。そのため当初の研究実施計画通り,追加的な調査を実施する他は,これまで収集してきた情報や調査で得られた結果を分析し,アウトプットとして公表することに専念してきた。2010年3月に,東京都の大気汚染障害者に係るぜん息医療費助成制度の「政策効果」を分析する調査をまとめた中間報告書を出したが,それをもとに医療系の業界新聞にエッセンスを発表して以来,関係の医療機関からの講演の依頼が数件入り,今年度初めはその準備に追われた。 そうした中で,6月には日本環境学会において調査結果をもとにした発表を行い,関連した論文を医療団体の雑誌(7月),一般商業雑誌(10月)にて各1本公表した。最終的な調査のまとめとして,調査結果と調査協力者らの論文も含め,東京経済大学学術研究センターのワーキング・ペーパーを2011年3月に発表する予定である(総65頁予定)。 また,東京以外の事例として,大気汚染被害救済の先駆的な取り組みをしてきた大阪・西淀川地域の調査をこれまで続けてきたが,その成果として,4月に反公害運動から「環境再生」を掲げたまちづくりへと運動が発展した内容をまとめた共著論文,地域医療を担う医師らが救済制度づくりにどのような影響を与えたかをまとめた2本の論文を10月と2011年3月(近刊)に発表した。 大気汚染以外の事例としては,水俣病の救済制度の研究を続けてきたが,その成果を2月に共同研究者と共著で発表した。これに関連して,大気汚染や水俣病,その他の被害者救済制度を,横断的に比較・検討する取り組みが今後求められるとして,法学者や環境経済学者らによる座談会に参加してその問題意識と現状認識を発言し,発表している。 以上のようなことから,さしあたりは当初予定した研究実施計画に沿った研究の遂行と,その実績の公表の責任は果たせたのではないかと考えている。今後,これらの公表成果について関係者や当事者らから批評・批判を頂き,研究内容の深化をめざさなければならない。
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