2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730378
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
庄司 拓也 専修大学, 人文科学研究所, 特別研究員 (10468621)
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Keywords | 社会福祉関係 / 日本史 / 教育学 / 社会学 / 教育心理学 |
Research Abstract |
本年度は、第一に明治期の東京感化院の退院児を検討し、論文にまとめた。更生して退院した院児は三割程度であり、決して多くはない。また、院児の六割は一年未満で退院している。施設側は長期入院をしなくては更生の成果はあがらないと保護者側に訴えていたものの、保護者側は短期間で退院させていた。 施設側では院児を更生させようとしていたものの、保護者側では一時的な懲罰を課すことで充分と考えていた。施設側と保護者側の感化院の役割に対する認識のズレは、感化院のあり方に少なからず影響を与えていたのである。 第二に明治期の東京感化院の給費生(在院料を免除されていた児童)を検討し、論文にまとめた。東京感化院は民間人によって設立・運営されており、原則として、院児から在院料を徴収していた。在院料は決して安くはなかった。そのため、院児は経済的に恵まれた階層の子弟を中心にしていた。そうした実態は、明治期の民間人の設立・運営による感化院の限界を示すものともいえるであろう。 一方で、経営を圧迫することから少数に抑えていたものの、在院料を減額したり、免除したりした院児も入院した。給費生を検討することで、東京市養育院と東京感化院の間で感化教育のうまくいかない院児などを相互に転院させていたことを確認できた。明治期の感化院では施設の間である程度連携もあったのである。 そうしたなかにあって、給費生の安養は東京感化院、東京市養育院感化部双方で更生への働きかけに失敗した。最終的に安養は精神病院に移された。安養については放火犯ということもあり、新聞で報道されるなど、世間の注目を浴び、不良少年は知的・精神障害児であるという認識が広まるきっかけになった。 精神医学と感化教育が結びつくきっかけになったのである。
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Research Products
(2 results)