2010 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける医療圏と地域医療連携に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20730384
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 第4室研究員 (50454492)
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Keywords | 医療提供体制 / 地域医療計画 / 医療圏 / 連携 / 専門職 / NHS / イギリス / 国際情報交換 |
Research Abstract |
今年度は、2回にわたり現地調査による史資料の収集やヒアリングを行った。それらを通じて、次の2つの観点からイギリス地域医療の歴史的展開を検討した。 1.地域医療の管理運営組織の単位およびその構造の変化:地域医療の管理運営体制は、NHS改革のたびに変更が加えられてきた。けれども、基本的に病院を中心に地域ごとのサービス管理の効率化を図り、患者の長期間の待機問題の解決を目指すものであり、1980年代までの改革は抜本的な解決にはならなかった。それが、1990年改革で準市場メカニズムが導入されて以降、NHSは病院よりもむしろプライマリ・ケアに重点を置いた医療制度へと転換された。本研究は、近年のプライマリ・ケア拡充に関連した一連の改革への検討を通じて、患者の医療アクセスの多様な側面で変化が起こりつつあることを示し、今後のイギリス医療の方向性を長期的な視座から考察した。 2.高齢者への医療・介護サービス提供システムの変遷:高齢者への訪問看護やホームヘルプなど在宅サービスは、1950~60年代はNHSのもとで提供されていた。ホームヘルプは元来、妊産婦のいる家庭での家事援助を目的としていたが、次第に高齢者の利用が増加したという変化が史資料の分析によって浮き彫りになった。1970年代以降、ホームヘルプが地方自治体の社会福祉サービスに移管されると、現在に至る医療と介護の分離が決定づけられた。その解決策として、2000年代には一部の地域でNHSのプライマリ・ケアに社会福祉サービスを統合した「ケアトラスト」が形成された。医療と介護に依然として存在する連携上の困難は、国と地方との関係にもかかわる問題であり、地域史の資料をさらに分析した上で再検証する必要があると考えられた。 以上の成果の一部は、既に学会や研究会で報告を行ったほか、図書の分担執筆や学会誌の投稿論文として平成23年度に公刊される予定である。
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Research Products
(1 results)