Research Abstract |
本年度では, 日常生活における欺瞞性認知の一端を明らかにするための予備的調査を実施した。 村井(2000)は, 日記法(Rochester Interaction Record)を用いて, "青年は1日に何回くらいうそをついているのであろうか""うそだと思う瞬間は1日に何回くらいあるのだろうか", という点について検討している。青年に1週間, 日記を携行させるという方法をとり, 日常生活において, 欺瞞的行動(うそをつくこと)及び欺瞞性認知(うそだと思うこと)がいかなる様相を呈しているか, という点について検討したわけであるが, 1週間日記を携行し事象が生起するたびに日記に記入するという手続きの煩雑さは否めない。そこで本研究では, 21年度に行う欺瞞性認知研究のための予備的調査として, 研究参加者4名にICレコーダーを1週間携行してもらい, 日常生活において欺瞞性認知が生じた際, 生起後できるだけ早くに, その内容についてできるだけ正確に録音してもらい, 1週間の日記携行期間終了後面接を行い, 気づいたことなどについて内省報告を求めた。なお, 提出は音声ファイルではなく, 内容を記載したエクセルのファイルのみである(倫理的配慮)。 欺瞞性認知の生起回数であるが, 1週間まったく欺瞞性認知の生起が観測されなかった研究参加者が1名いた。研究参加者4名の欺瞞性認知の回数(1日平均)は, 2.71回, 0.71回, 0.57回, 0回, であった。村井(2000)同様, 欺瞞性認知は,欺瞞的行動に比して生起回数が少ないことが推測される。 本研究の意義についてであるが, 欺瞞性認知という観点から, 日常のコミュニケーションの様相を明らかにする、という点が大きい。得られたデータをもとに, 欺瞞性認知に関する実証研究につなげていく。
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